(終了)【感想】CAMKコレクション展 Vol.7 – 未来のための記憶庫

新年度も始まり慌ただしく日常が走り出すなか、熊本市現代美術館 では第7回目のコレクション展が始まった。

美術館には、「展覧会を見に行く」とは別の「コレクションをし保存していく」という働きがあるのはあまり知られていない。 今回は、現代美術館が所蔵する膨大なコレクションの中から、熊本ゆかりの作家の作品、世界的活躍をする作家の作品まで幅広く展示されていて、見応えある展覧会になっている。

「未来のための記憶庫」というタイトル通り、今まで現美で開催された印象深い展覧会の作品も並ぶ。「あぁ、これは面白かったな」「これは見逃した展覧会だ」と懐かしく、個人的な記憶も呼び戻してくれる。
会場の最初の方にある川内倫子さんの「川が私を受け入れてくれた」という写真と散文で構成された作品は、現代美術館らしい軽やかな空間展示で、見る人の情緒にそっと寄り添うようだった。
重厚感のある絵画作品からの流れは、それこそ現代美術館の意義を感じさせるし、静かに心浮き立つものがある。



膨大な作品群を見終わる頃には、熊本の地にこれだけ根深く、広がりを持って美術が存在してきたのだと気付かされる。

また社会情勢を反映した作品に触れれば、歴史的意味と同時に今を感じる。「今」という時代がどうあるのか否応なく考えさせられる。
一見サラリとした優しい展示だが、会場を奥に進むにつれ、とっつきにくい、なんだかよくわからない「現代美術」という分野に、自然と入り込んでいるようだった。

市街地の一等地に現代美術館があるという文化的にも大変贅沢な環境で、私たちは日々過ごしている。実際に展覧会場に立ち入らなかったとしても、自然と目に入っている告知看板や広告で、記憶のどこかにこの現代美術館があり続けている。

このコレクション展は、「あの時の私」から少し先の視点に訴えかけてくる。
「現代」は10年後、20年後、もっと未来に続くのだ。 多彩な作品たちが、時間の尺度をぐっとのばしてくれる。 新しい日々が始まった今こそ、ぜひこの「未来のための記憶庫」に触れていただきたい。

nekome.aya.nekome

ライター

オールクマモトの中の人の後輩

落書きとおにぎり作りがライフワークの主婦

落書きとおにぎり作りがライフワークの主婦
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