【レポート】ムーミン展の内覧会に行ってきた
令和2年 2020.11.14(土)〜 2021.1.11(月・祝)、熊本市現代美術館で開催中の、ムーミン展 THE ART AND THE STORY の内覧会に参加してきた。
関係者の話によると、初日から来館者は1000人を超え平日も400人を超えているようで、注目度の高い展示会となっている。
館内は充分なコロナ対策を施した上で、内覧会は実施された。
今回の展示会は基本的に撮影禁止ですが、記事作成のために特別に撮影の許可を頂いています。
まずは感想から
毎回思うのだが、現美さんの学芸員さんの説明は丁寧で予習もなく現地に訪れても非常にわかりやすく、勉強になります。
ムーミンのことは知っていたけれど、作者のトーベ・ヤンソンのことはほとんど知りませんでした。このムーミン展は、かわいいムーミンたちの絵を見るだけでも楽しめますが、その背景にあるトーベの思想や人生ステージと合わせて鑑賞すると、より展示に奥行きを感じられます。自然の中でのんびりと制作しながら過ごし、自然と同じ寛容さであらゆる他者を受け入れるムーミンママのような懐深い優しさをもつトーベ、芸術的才能、溢れる意欲、それを形にしていく行動力と環境の中でのびのびと才能を開花させていくトーベ、彼女の持つ様々な資質が投影された多種多様な魅力の作品群!!キュレーターの方のムーミン愛も溢れています。展示点数も多く、解説文の充実しているので、時間があるときに、もう一度、じっくり鑑賞したい。
参加者の感想
あらためてムーミンは可愛いなと思いましたし、学芸員の方の説明を聞いて小説を読み返したくなりました。ムーミンの体型の変化や、トーベの描いたムーミンとは関係ない風刺画(作中、トーベの署名代わりのムーミンのようなキャラクターが登場)を見ることができ、今回のムーミン展でしか見ることのできない展示が盛りだくさん。風刺画には絵とその内容の解説文がついていましたが、時間が足りなくて解説文はほとんど読めなくて残念、時間があるときに再訪したいです!
展示内容
ムーミンファン必見!フィンランドのムーミン美術館とトーベ・ヤンソンの親族が運営するムーミンキャラクターズ社から提供された合計500点にものぼる膨大なコレクションを展示。小説や絵本の原画はもちろんのこと、構想段階のスケッチや風刺雑誌の挿絵や企業広告、キャラクターグッズやフィギュア、舞台作品やトーベ・ヤンソンの制作現場の様子、日本との関連性を示す資料など、この展覧会でしか見られない展示品が満載!
Chapter 1.ムーミン谷の物語
トーベが紡いだムーミンの物語は全9作。この章では、全作品の挿絵の原画が時系列に展示されています。本に掲載された挿絵のみならず、構想段階でのスケッチや初版と差し替えられた挿絵も並列されており、制作時におけるトーベの思考を垣間見ることができます。スケッチでは描かれていなかったものが挿絵では描かれていたり、その反対も。また、水彩画から線画へ、時にはスクラッチ画法(白く塗った紙一面に黒い色を乗せ、黒い部分を削って絵を描いていく画法)に挑戦するなど、トーベの描き手としての才能や表現法による作風の違いも楽しめます。作品の制作過程の一端を垣間見れる楽しさも!
Chapter 2.ムーミンの誕生
トーベは挿絵画家だった母親の手ほどきもあり、若いうちからイラストレーターとして活躍していました。この章では、ムーミンを発表する以前の、イラストレーター、トーベ・ヤンソンの作品が並んでいます。政治風刺雑誌に掲載された風刺画がたくさん展示されていますが、その絵の中には自身のサイン代わりのカバのようなぽっちゃりとしたキャラクターが小さく描かれています。ムーミンはお話を作る時に生みだしたのではなく、元々、トーベの中にあったキャラクターだったのですね。風刺画には解説文がついており、絵を見るだけでも楽しめますが、解説文を読めば面白さ百倍!時間に余裕もっての鑑賞をおすすめします。
Chapter 3.トーベ・ヤンソンの創作の場所
ヘルシンキにあるアトリエとクルーブ島に自作した小屋。この章では、トーベが過ごした場所について知ることができます。自然の脅威を知っているトーベはクルーブ島の小屋の入り口に鍵のありかを書いた板を掲げておき、自然の災難に見舞われ、行き場をなくしてしまった人をいつでも受け入れていました。ムーミンママの母性はトーベの持つ寛容さ、優しさでもあったのです。このクルーブ島では、仲間とともにのびのびと創作活動に打ち込む際の楽しさが伝わってきます。ただ自分たちで楽しむためだけの、どこにも公開する予定のない映像作品も作られていました。
Chapter 4.絵本になったムーミン
トーベは、ムーミンたちが登場する絵本も4作品、描いています。この章では、絵本のイラストが展示されています。小説の中のモノクロの挿絵とは一転、色のついた水彩画はムーミン世界に温度感を与えてくれます。トーベは「作品は自身のために描いている」と述べていまル通り、子ども向け絵本というよりも大人がワクワクするような色彩感の絵本です。
Chapter 5.本の世界を飛び出したムーミン
ムーミンは当初、本国フィンランドでの人気は芳しくなく、イギリスの新聞に掲載されたことから人気が広がっていきました。その人気は世界各国に広まり、日本ではおなじみのアニメとして大人気を博しました。この章では、本の世界を超えて活躍するムーミンたちを見ることができます。お堅いイメージの銀行の広告も、ムーミンたちが登場すると絵本のようなほんわか楽しいムードになり、宣伝キャラクターとして人気のある理由がよくわかります。無許可で作って販売されていたムーミンたちの人形も、「可愛い!」と気に入り許可を与えてしまうトーベの寛容さ、、、この辺りもムーミンの活躍の場が広がっていく一因なのでしょう。
Chapter 6.舞台になったムーミン
トーベの周りには、写真家や漫画家など、芸術家が多く、仲間とともにムーミンの舞台を作り上げています。脚本だけでなく、舞台美術や衣装の製作にも携わりました。この章では、舞台にまつわるものや当時の写真を見ることができます。オペラのパンフレットは、ムーミンママのハンドバッグがモチーフで、とってもお洒落。その一方で、ムーミンの人形には演者の顔が丸見えの穴があいており、時代を感じさせます。
Chapter 7.日本とトーベとムーミン
この章ではタイトル通り、様々な観点から日本とトーベとムーミンの関係を見ていきます。トーベが来日した際の写真や宿泊した旅館で描かれたイラスト、翻訳者の紹介といった明らかな関連性から、トーベのイラストと日本の浮世絵を並べ、それらの類似性から浮世絵の影響をうかがわせるような意欲的な試行まで、多様な展示で魅せてくれます。ムーミンと浮世絵がつながることはこれまで全くなかったけれど、並べて見せられると確かに似ている、展示を見ながら「うん、うん」と頷いていました。これは、すごくおもしろかったです!