レポート「第2回九州地区小学生グループプレゼンテーション大会 」(@熊本マリスト学園中学校)

令和2年2月8日 熊本マリスト学園中学校(熊本市)にて、NPO法人 ロジニケーション・ジャパンと全国教室ディベート連盟 九州支部による2回目の「小学生グループプレゼンテーション大会」が開催された。

趣旨・目的

小学生の持つ豊かな発想力や表現力を発揮する場を設定することで、学びの持つ根源的な喜びや社会的な意義を、参加者のみならず社会全体に広めていくこと。

開催要項

ロジニケーション・ジャパンが提案する「グループプレゼンテーション」とは

大会当日にテーマを発表し、チーム全体で議論をしながら、現状の問題点、具体的な方策、必要な物資、提案のセールスポイントを、模造紙に決めれた色の付箋で張っていく。そして最後に、カラーペンで、見やすいようにグループ化したり、装飾したりして、プレゼンテーションシートを完成させる。

その後、模造紙と付箋を使ったプレゼンテーションシートを掲示し、プレゼンテーションと質疑応答を行う。審判は、プレゼンテーションシート、プレゼンテーション、質疑応答の合計点で審査し、点数上位のチームを勝利とする。

当日の様子

熊本・福岡から16人の子どもたちが3チームに分かれてグループプレゼンテーションに挑んだ。なかには参加児童の妹(年長児)の姿も。

開会式で発表された課題は、熊本中央郵便局前の交差点の写真と地図をみて、かくれている街の問題と効果のある対策を提案するというもの。

参加児童は、初対面・異年齢のチームメートとのやりとりに戸惑う場面もあったものの、2時間をかけて発表の準備に取り組んだ。

その結果、「だれに対しても優しい道路」を提案したBチームの勝利となった。

論題

下の地図は熊本中央郵便局前の交差点付近のものです。そして、次のページからの写真は、この交差点付近を写したものです。この写真の中にかくれている街の問題(「なんとかしたほうがいいな」と思うところ)を取り上げ、効果のある対策を提案してください。

問題はいくつ取り上げてもいいですが、プレゼンテーションシートの一番上には、みなさんが目指す街のキャッチフレーズ(心に伝わる短い言葉)を書いてください。(例)「子育てしやすい街」

参加保護者の感想

「楽しかった。また参加してみたい。」と言っています。初めてのメンバーでも「楽しい」という感想を持っているようです。娘は自分から発言しないので心配していました。しかしグループワークも自分でできることを探しながら役割を担えていたようです。このような姿を見ていて、嬉しく思いました。
グループワークでは、ファシリテーションはとても重要な役割だと考えています。マリスト学園の生徒の皆さんがファシリテーターを担って下さったおかげだと思っています。

まとめ

昨年末、板橋区の小学生たちがボール遊び場を求めて手書きの陳情書を区議会に提出したことが話題になった。小学生には選挙権がない。でも、彼らは立派な住民のひとりだ。暮らしのなかの不便を見つけ、その解決を訴える権利がある。

この児童たちのような活動を急に始めることは難しい。議会に訴えるには時間がかかる。手間もかかる。周囲のおとなの協力も不可欠だ。

できることから挑戦してみるのはどうだろう。

日々利用している道路の写真をじっくり眺める。そのなかに隠れている交通事故の危険性、分煙やゴミの問題を意識し、言葉にする。解決策を話し合う。提案する。

今回、半日かけて子どもたちが経験したのは、政策提案の体験、住民自治のトレーニングだ。「帰り道に、お住まいのエリアの気になるところ、ちょっと危険なところを発見して親子で話し合うといいですね。」

熊本マリスト学園の吉廣誠教諭の閉会式での発言だ。

「何もしないうちから文句をつけるのではなく、自分たちで動けることはやっていくのが自治だろう。」

今回、グループプレゼンテーション大会の閉会式で、主催者のひとりである神尾雄一郎氏は言う。

彼が言う「自分たちで動けること」は、署名活動やデモではない。自分たちの街について真剣に議論し、提案することだ。

神尾氏は、群馬県出身。現在は東京都を中心に活動しており、熊本とは縁もゆかりもない。

だが、昨年8月にサンロード新市街(熊本市)で開催された「くまもと街づくりディベート大会」など、たびたび熊本に足を運んでいる。

その際、神尾氏は以下のように記している。

「私が今回最も感動したのは、主催した商店街の皆様やチームとして参加した社会人の皆様など、ディベートとは縁遠いと見られがちな方々が真剣かつ楽しく取り組まれていた姿です。

論理的コミュニケーション力をこの国に根付かせていく私の大目標の萌芽を見た思いが致しました。」ディベートやグループプレゼンテーションは、住民自治の新しいトレーニングの場だ。そして「くまもと街づくりディベート大会」は今年も夏に開催される予定だ。おとなから子どもまで、それぞれの当事者意識のもと、議論を楽しんでほしい。

主催者情報

全国教室ディベート連盟 九州支部

20年以上にわたりディベートの発想と技術を学校や社会に普及させる活動に取り組んでいる団体。

全国教室ディベート連盟は、ディベートの技術と発想を学校教育に普及させることで健全な市民社会を構築することを目的として1996年に発足。中高生を対象とした最大の日本語ディベート大会「ディベート甲子園」を読売新聞社と共同開催している。

支部長の井上奈良彦(九州大学言語文化研究院 教授)を中心とした九州支部は、ディベート甲子園九州地区予選(九州地区中学高校ディベート選手権大会)など日本語ディベートの大会・講習会などの運営、中学校高校における日本語ディベート実践の支援などを行っている。

2019年度より、ディベート甲子園九州予選は熊本マリスト学園(熊本市)に会場を移動。熊本の企業・団体のご支援のもと運営されている。

》問い合わせ先 nadekyushu@gmail.com