
令和7年4月10日(木)から開催される「不知火美術館 2025 年 春の企画展:海にねむる龍 ― 働正がのこしたものについて」の情報をいただいたので、紹介します。
本展は不知火美術館の収蔵作家である「働正(はたらき ただし)」に焦点をあてた企画展となります。
働正(1934-1996)は熊本県宇土郡不知火町松合、現・宇城市不知火町に生まれ、戦 後、福岡を中心に活動した前衛美術集団「九州派」を理論的に支える存在でした。
既存の美術表現や制度に反発し、路上でのハプニングやインスタレーションなど、その 場限りの表現を実践した美術家として知られています。
同じく九州派のメンバーだった谷口利夫が福岡県大牟田市に開設した画塾「西部美術学園」を1965年に引き継ぎ、以降およそ30年にわたって児童美術教育に取り組みました。
独学で美術を学んだ働は、たんに技術を教えるだけではなく、自らの想像力によってイメージ生み出すことを伝えました。
本展タイトルにもある『海にねむる龍』は、西部美術学園で2年にわたって子どもたちと制作した版画創作絵本です。
福岡・大牟田の大蛇山まつり、熊本・不知火に伝わる不知火伝説に着想を得て作成されました。
1980年代から晩年にかけては絵画に取り組み、近代美術が重視したような、個の作家や作品のみに認められる「オリジナリティ」から解放された表現を試みました。
児童美術教育や絵画への回帰という、一見<九州派>の理念や活動とは相容れないように見える活動を通じて、集団と個人のはざまで、 美術の「中心」から遠く離れた「地方」における生活において、いかに芸術を成立させるのかという問題を問い続けたのです。
本展は、美術史においてあまり語られてこなかった「作品」の周縁に存在するものに目を向け、「前衛」や「九州派」という言葉の奥にある、作家の足跡をたどるものです。
出展作品照会
働正(はたらき ただし) プロフィール
1934年 熊本県宇土郡不知火町松合(現 宇城市不知火町)に生まれる。
1960年 この頃、北九州にて前衛美術家集団「九州派」に参加し、論客の一人として活躍。
1965年 大牟田市の画塾「西部美術学園」で、児童美術教育に携わる。同人誌「反存在」に参加。
1973年 個展(大牟田井筒屋)
1986年 個展「毳(けばだ)つエッジ」(福岡 ギャラリーおいし)
1987年 個展「毳つエッジ 87」(熊本 島田美術館ギャラリー)
1988年 「九州派」展(福岡市美術館)シンポジウム「九州派を解剖する」にパネリストとして参加。
1994年 個展「働正 83~ 93」(熊本 島田美術館ギャラリー)
1996年 4月死去(62歳)
見どころ
- 近年注目が高まりつつある戦後の前衛美術集団「九州派」と児童美術教育、一見相いれない両者の活動を経て、最後に絵画へと回帰した働正の足跡を紹介
- 美術館では初となる絵本『海にねむる龍』の版画や版木、西部美術学園で発行していた働正による手書きの機関紙『えのぐばこ』など貴重な資料を展示
- 働正の作品制作の試行錯誤が読み取れるスケッチブックや絶筆とされている絵画作品などを公開
関連イベント
担当学芸員によるギャラリートーク
開催日時:2025年4月13日(日)、6月7日(土) 14:00~14:30
会場:不知火美術館 展示室
定員:なし
参加費:無料(要展覧会チケット)
受付:当日参加
Uki ZINE Market
開催日時:2025年5月3日(土) 10:00~15:00
会場:不知火美術館・図書館 館前広場
働正にちなみ、「ZINE」中心のマーケット開催!個性豊かな冊子が集結します。ZINE体験のワークショップや、美味しいマルシェも同時開催。大人も子どもも楽しめるアートなひとときを、ぜひご家族で!
ガリ版体験ワークショップ
開催日時:2025年5月3日(土) 10:00~15:00 の間で随時受付 ※12:00~13:00の間は休止
講師:後藤ガリ版印刷所 後藤早智子 先生
会場:不知火美術館・図書館 館前広場「Uki ZINE Market」内
定員:なし
対象:5歳以上(未就学児は保護者同伴)
参加費:1,000 円+印刷する素材代
受付:当日参加
不知火竜燈太鼓
開催日時:2025年5月3(土)12:00~12:30
会場:不知火美術館・図書館 館前広場
演奏者:不知火竜燈太鼓保存会
定員:なし
参加費:無料
トークイベント「働正がのこしたもの」
開催日時:2025 年5 月25 日(日)14:00~15:00
会場:不知火美術館・図書館 ブック&カフェエリア
登壇者:働淳「西部美術学園」主宰
定員:20 名
参加費:無料(要展覧会チケット)
受付:4 月1 日(火)より不知火美術館・図書館カウンターまたはお電話にて
開催概要
会期:2025年4月10日(木)~2025年6月10日(火)
開館時間:9:00~18:00 (土曜日は21時まで)
会場:不知火美術館 展示室
入場料:大人300円/高大生200円/中学生以下無料
※チケットご提示で期間中、何度でも入場可能
※20名以上の団体割引料金あり、ほか各種減免制度あり
休館日:会期中無休
主催者:宇城市不知火美術館(指定管理者 カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)
企画:田中雅子 (キュラトリアル・アドバイザー)
公式サイト:https://www.museum-library-uki.jp/museum/project/2025/03/905
▶最新情報、詳細は公式サイトをご確認ください。
不知火美術館・図書館
宇城市の「不知火美術館・図書館」は、美術館と図書館が融合した独特な文化施設です。2022年4月にリニューアルオープンし、「誰もが創造性を育み発揮する」をコンセプトに掲げています。美術館では宇城市ゆかりの世界的芸術家の作品を展示し、図書館は知の拠点として機能しています。建築は不知火現象をイメージし、95mの連続した外観とアルミルーバーが特徴的です。施設内にはBook&Café、学習室、アトリエなどが充実し、芝生広場でのイベントも開催。アートと知的好奇心を刺激する空間で、地域の文化発信拠点として注目を集めています。
公式ホームページ:https://www.museum-library-uki.jp/
- 交通
産交バス 宇城市不知火支所前 下車すぐ
JR鹿児島本線 松橋駅 10分 - 所在地
熊本市東区新南部6丁目1−13 - 駐車場
152台 無料